週刊『印刷雑誌』

週刊『印刷雑誌』臨時号 3巻18号 2012年4月26日
Japan Printer weekly Vol.3, no.18
毎週月曜日10時発行

週刊『印刷雑誌』は,印刷会社に限らず,印刷物を購入する人,印刷に興味がある人を対象にした無料のWebメディアです。
紙メディアである技術専門誌の月刊『印刷雑誌』(1470円)と連携し,印刷に関係した情報を中心に毎週月曜日発行します。

前回(週刊『印刷雑誌』臨時号 3巻12号 3月22日)に引き続き,世界最大の印刷メディア向け展示会drupa(ドルッパ,5月3日〜16日,ドイツ・デュッセルドルフ)情報をお届けします。

B2 drupa
 今回,電子写真方式にせよインクジェット方式にせよ,デジタル印刷機の範疇でB2サイズの用紙が可能な新製品が登場している。今回のdrupaを「B2 drupa」と呼ぶ人もいるほどだ。
 たとえばミヤコシはB2判の液体トナー(1〜2μm)のカラーデジタル印刷機をリョービとともに開発した。オフセット印刷機の筐体や圧胴式のグリッパー用紙搬送システムのため,見当精度は良く,B2判で8000枚/時の能力で生産性も高い。定着はIR+熱定着である。
 同様にヒューレット・パッカード社(HP)もB2判の液体トナーのデジタル印刷機を発表した。軟包装・ラベル向けの巻取紙タイプのものもあるが,商業・写真・出版・紙器(厚紙)向けはいずれもB2判である。
 富士フイルムの商業用インクジェット印刷機もB2であれば,新たに発表したパッケージ用インクジェット機もB2判であるし,大日本スクリーンの枚葉タイプもB2判である。

インクジェットは枚葉も巻取紙も多彩に
 今回のdrupaは,「再度インクジェットdrupaか」と言われるほど,レパートリーが増えた。数年前までインクジェットというと,サイン(看板)や色校正用の大判,あるいは配送用印字,家庭用やオフィス用などのイメージがあった。今回は,出版・商業・パッケージにもインクジェット印刷機が登場している。

 枚葉機では,drupa2008でB2判のインクジェット印刷機を富士フイルムと大日本スクリーン製造が発表し話題を呼んだが,今回のdrupaでは,小森コーポレーションとコニカミノルタが協力してB2判で技術発表する。
 また富士フイルムは,drupa2008で発表した水性インクでB2判対応のものと,今回新たに厚紙パッケージ向けのUVインクでB2判対応のものを発表する。サイン向けの大判インクジェットプリンタや,紙以外の媒体にも出力できるインクジェットプリンタでのUV仕様が,商業・出版系のインクジェット印刷機でも登場するようになった。

 一方,連帳(巻取紙,長尺)タイプでは,ミヤコシ,大日本スクリーン製造,コダック,HP,ゼロックス,オセなどがある。
 ミヤコシは今回,片面8色(CMYK+特色4色)で両面出力可能なタイプを発表する。水性染料インクのほか,水性顔料インクも発表し,グロスコート系の用紙に下地処理なしに出力できる。また,さまざまなメーカーにインクジェット印刷機をOEM供給してきているのもミヤコシの特徴の1つかもしれない。
 コダックは,量産型サーマルDOD(ドロップ・オン・デマンド)機と比べコストパフォーマンスが45%向上するという機種を発表している。HPは,新たなヘッド技術とナノテクノロジーの顔料インクを開発し,インクジェット輪転機3機種に採用したといっている。これにより,画像の品質を損なうことなく生産性を最大25%向上したという。

 小森コーポレーションも巻取紙タイプも技術発表する。
 東京機械製作所のものは両面タイプで,商業印刷も可能ながら新聞紙にも適している。どのメーカーの顔料インクでも対応できることを指向している。
 また,HPやコダック,コニカミノルタなどは,ヘッドをモジュール化して供給している。新しいところでは,たとえばコダックのものは,Timsons社製デジタル両面モノクロ書籍印刷システムに採用された。最大用紙幅135cm,最大速度200m/分である。

デジタル印刷機の新技術
 コダックは,オフセット印刷で多用される市販のコート紙,非コート紙,グロス紙(45〜300g/m2)をトリートメント処理し,その表面をインクジェット印刷に最適な物理的条件(水性顔料インク,蒸発乾燥,インクの吸着性,高耐久性など)に適合させ,使用用紙の選択の幅を広げるというIOS(Image Optimizer Station)も発表する。また,用紙の画質を数値で評価し,出版,DM,商業印刷の各分野で同等の用紙を比較するさいに役立つとされる,同社のインクジェット向けの「用紙評価システム」も発表する。
 HPは,液体トナーのデジタル印刷機に,黒をCMYの3色で表現することにより通常の4色印刷時と比べ印刷速度を最大33%向上させる新機能EPM(Enhanced Production Mode:生産強化モード)を搭載した。また特色としてライトブラックを搭載。高価な芸術品などの白黒のものに使い,約25%コストを削減するという。印刷をしながらすべての印刷物の表裏をスキャンする検査機構もある。
 HPの新型のインクジェットのヘッドは,色域を拡張し,蛍光ペン耐性が良く,より正確な着弾になったという。蛍光ペン耐性は,これまではインクジェットで出力した画像の上から蛍光ペンで書くとすれて汚くなったが,今回はきれいに書けるという。
 3巻12号の後に詳細を発表した出展社の概要を紹介する。

東京機械製作所
 ドロップオンデマンド型インクジェットデジタル印刷機JETLEADER 1500と,版胴・ブランケット胴比1:1のコンパクト設計ながら印刷最高速度8万回転/時で効率性,経済性に特化した4×1新聞輪転印刷機CT5000UDIを出展。デジタル印刷機では,当日のDow Jones社The Wall Street Journalを毎日印刷する。紙面情報を米国からdrupa会場に送り東京機械のワークフローで処理し,米国国内版と同じ紙面構成(最大5セクション72ページ)の同紙を600×300dpi,150m/分で実演する。また,韓国・中央日報社(ベルリナー判)と京都新聞社(タブロイド判)の紙面をデジタル印刷で紹介する。さらにVITS社製シートカット装置,ホリゾン製断裁機,無線綴じ機と組み合わせ,A4判,A5判の製本作業を実演する。

ミヤコシ
 用紙搬送などをリョービと共同開発したB2判液体トナー方式デジタル枚葉印刷機と,輪転式インクジェット印刷機を出展する。
 液体トナーデジタル印刷機は,グリッパー用紙搬送による4つの圧胴式ユニット構成(オフセット4色機と同様)で,5つ目が定着ユニットになっており,4色B2判8000枚/時の生産性。オフセット印刷機と同等の見当精度。定着は,IRでプレヒート後,通常の電子写真方式と同様。液体トナーは,粉体トナーの10分の1程度の大きさのため紙面上のトナー層も薄くでき,紙質を維持できるのも特長の1つ。解像度は1200×1200dpi。
 インクジェット印刷機「MJP20MX-7000」は,1200×1200dpiのヘッドを搭載し,片面8色(CMYK+特色4色)が可能。水性染料インクに加え,水性顔料インクも開発し,下地処理などなしにグロスコート系用紙に印字できる。最大印字幅508.0mm,最高速度320m/分。

ミューラーマルティニ
 製本関係では,無線綴じ・中綴じ・上製本に対応できる「シグマライン」,1mm厚の本が可能な分散型サーボ駆動の全自動無線綴じ機の新製品,ハードカバーライン「ディアマントMC Hybrid」,三方断裁機「シグマ」,コンパクト糸かがり機「ベンチュラ・コンパクト」を出展する。印刷・加工では,素材幅850mmのフォーマット(厚さ,サイズ)バリアブル印刷機「VOSP850」,16,000回転/時の「プリメーラ」+シトマ社のライン,「プレストII」,3000回転/時のチラシ挿入機「フレックスライナー」,アフターサービスのパッケージ「MMサービス」を紹介する。上製用ハードカバーラインも分散型サーボ駆動で,(1冊から作る)フォトブックに適する。
 また,KBA社の新型インクジェット印刷機に直結した製本機,およびヒューレット・パッカード社の新型インクジェット輪転機に直結した「シグマライン」を各ブースで実演する。

ホリゾン
 29種類の製本関連機器を揃え,無線綴じ製本,中綴じ製本,紙折りのゾーンに分けて提案する。
 大日本スクリーンのTruepress Jet520で印刷したロール紙をスイスHunkeler社のUW-6,CS-6?を介してAF-566F DigitalにPSX-56を連動させることで1冊ずつの束をコンベヤ上に排出し,無線綴じ製本機BQ-470で製本,連結した三方断裁機で最終仕上げまで行う。また,Oce ColorStream 3500で印刷したロール紙を中綴じ製本システムStitchLiner6000 Digitalで毎回異なる内容・枚数の冊子を仕上げる流れを紹介。さらに小森コーポレーションのリスロンG40Pで印刷した枚葉紙をプリカットなしで,A4判仕上げは紙折り機AFC-746Fで16ページ折り,A5判仕上げはAFC-746Dで32ページ折りに加工し,無線綴じ製本ラインCABS4000Sへ積み込む。次にCABS4000Sの給紙方式の切り替えで,Truepress Jet520で印刷したロール紙を無線綴じラインに送り三方断裁仕上げまで行う。 新製品は,書籍製本システム「スマートバインディングシステム」AF-566F Digital+PSX-56/ BQ-470+三方断裁機,オフセット印刷からの製本加工とデジタル印刷からの製本加工の両方に対応可能なCABS4000S+AF-566F Digital with PSX-56,オフラインフィーダ HOF-400,筋入れ折り機CRF-362,四六半裁判全自動紙折り機AFC-566FKT,クロス折り機AF-762KLS,ニアライン中綴じ折り製本システムSF-100+CW-8000NL。

コニカミノルタ
 印刷会社がデジタルビジネスを容易に始められる提案を行う。出展機種は,カラー測色機,ラベルインクジェットプリンター,W2Pシステムとクラウド型フォトブックシステム,メンバーズカードの自動封入封緘システム,自動圧着メール作成システム, bizhub Press 2250Pを活用したブックオンデマンド,ジョブチケット機能を備えた新製品bizhub Press 1250,新製品bizhub C754を活用したオンライン受注・決済システム,旗艦モデルbizhub PRESS C1000など。
 技術展示として,独自のヘッドとインク技術により,小森コーポレーションと共同開発した,3300枚/時,1200dpi,CMYKの枚葉インクジェットデジタル印刷機を紹介する。

ヒューレット・パッカード
 次の10モデルの新製品を出展。HP Indigoモデルは,液体トナーのデジタル印刷機。それぞれ拡張生産モード「EPM」として,4色の絵柄を3色でそん色なく再現し,33%の生産性向上とコスト低減を図れる技術を搭載している。
 「HP Indigo 5600」は,90枚(A4判)/分の汎用機。白インクも可能でフィルムにも対応する。4色構成で4400万円から。「同7600」は160枚/分。型専用の台紙によりエンボス加工もでき,また特色としてライトブラックを採用。「同W7250」は,カラー320枚/分,モノクロ960枚/分のロールtoロール型。「同10000」は,商業,写真,出版向けのB2サイズの7色機。4色で3450枚(B2判)/時,EPMで4600枚/時,1色6900枚/時。「同20000」は軟包装向け巻取紙供給型。「同30000」はパッケージ向けで0.6mm厚の用紙まで可能。HP Indigo 10000用に,ホリゾンおよびMBOと,インライン可能な後加工機を共同開発している。
 インクジェット輪転機は,上位機種から「T410」「T360」「T230」の3機種。モノクロ244m/分,カラー122m/分の性能がある。印字面上に蛍光ペンできれいにマークできるようにし,またインク着弾の正確さも向上させた。さらに,インクジェット部分をモジュールとして提供も始める。

GMG
 パッケージ印刷向けに新たなスポットカラー・ソフトウェアパッケージを出展する。これには,改良されたプルーフ技術やカラーマネージメント・ソリューションを含み,ネットワークとしてクラウド技術を採用している。また,広告代理店・写真家・製版会社から,ブランドオーナーを介して印刷会社・出版社までのすべてのサプライ・チェーンに関係する組織を対象としたソフトプルーフィングのツールも発表する。

何に使うか
 デジタル印刷機のレパートリーが増えてきたというのは,デジタル技術や材料の進歩はもちろんあるが,市場が小ロット化し,従来のオフセット印刷機ではコスト的に対応が難しくなってきたことが背景の1つにある。
 印刷会社は技術動向に注力する必要があるが,印刷物を発注する人は,デジタル印刷機がどのタイプで,ヘッドはどこのメーカーを使っていて,などということはまったく気にしない。今では,オフセット印刷だろうがデジタル印刷だろうが,気に留めないだろう。
 メーカーの技術を見ながら,印刷会社はその機械で消費者にどのような印刷物,印刷サービスを提供していくかが,これまで以上に求められ,それが差別化につながっていく。

 なお,週刊『印刷雑誌』臨時号 3巻12号(3月22日発行)でもdrupa情報を提供しております。合わせてご利用ください。

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月刊『印刷雑誌』5月号(2012年4月20日発行,1400円)では,drupa情報を掲載しました。特集は「電子書籍と紙の価値」です。1号1470円。フリーのWebマガジン週刊『印刷雑誌』と合わせ,ご利用ください。

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週刊『印刷雑誌』臨時号 3巻18号
2012年4月26日発行
編集長:武川久野
発行人:中村幹
発行所:株式会社印刷学会出版部

 


 

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