週刊『印刷雑誌』

週刊『印刷雑誌』臨時号 3巻20号 2012年5月10日
Japan Printer weekly Vol.3, no.20
毎週月曜日10時発行

週刊『印刷雑誌』は,印刷会社に限らず,印刷物を購入する人,印刷に興味がある人を対象にした無料のWebメディアです。
紙メディアである技術専門誌の月刊『印刷雑誌』(1470円)と連携し,印刷に関係した情報を中心に毎週月曜日発行します。

世界最大の印刷資機材展・印刷メディア見本市drupa開幕
 世界最大の印刷資機材展・印刷メディア見本市drupa(ドルッパ)が5月3日から16日まで,ドイツ・デュッセルドルフの見本市会場で開催されている。51ヵ国から1766社・団体(内ドイツ577社・団体)が16万5487m2での出展という規模である(前回2008年は53ヵ国から1953社・団体が17万4681m2で出展)。
 日本からは37社・団体が7529m2で出展している。この数字には海外子会社から出展する富士フイルムや大日本スクリーン製造,セイコーエプソン,キヤノン,リコーなどは含まれておらず,これらを入れると日本企業の出展面積は1位のドイツに次ぐのではないかと想像できる。日本の印刷資機材メーカーの立場がどれだけ大きいかが理解できる。

インクジェットdrupa
 前回のdrupa2008に続いて一つのキーワードは前評判どおり,インクジェット(IJ)だった。サインディスプレイ用の大判IJの新製品もかなり発表されたが,今回の主流は,商業,出版,パッケージ(シール・ラベル,厚紙)用の印刷機としてのIJ製品である。富士フイルム,コニカミノルタ,大日本スクリーン,そして小森コーポレーション,ミヤコシ,富士ゼロックス,ヒューレット・パッカードなどが技術,製品を発表した。
 IJのインクでは,サカタインクスや東洋インキがグループ企業や協力会社のIJ印刷機やIJによる印刷物を紹介した。また,ゼロックス・コーポレーションやヒューレット・パッカードも高速IJ機や大判IJ機でインクに焦点を当てて出力を実演した。

B2 drupa
 枚葉紙(カット紙)タイプのデジタル印刷機と言うとこれまでA3サイズが多かったが,今回はB2サイズのものが多かった。小森コーポレーションとコニカミノルタの共同開発のIJ印刷機や,富士フイルムJetpress,大日本スクリーンTruepressJet SXなどのIJ印刷機もB2であり,またミヤコシやヒューレット・パッカードは液体トナー印刷機のB2サイズの新製品を発表した。B2サイズで市場に出ているオフセット印刷物の大半に対応できるという。

パッケージdrupa
 今回はまた,アナログ,デジタルどちらも軟包装,紙器,シール・ラベルなど総じてパッケージ分野に対応する機種の発表も多くあった。フレキソでは,大日本スクリーンやコダック,富士フイルムなどがフレキソCTPを展示した。ヘル・グラビアやオハイオなど関連数社を統合したヘリオグラフホールディングスは,フレキソ,グラビア両方の彫刻機を発表している。前述の富士フイルムや大日本スクリーンのIJ印刷機も0.6mmまでの厚紙に対応できる機種を展示した。

BOD drupa
 そして今回,オフセット印刷機やデジタル印刷機にオフラインまたはインラインで製本機を付け,オンデマンドで小ロット多品種の本を作る(BOD:Book on Demand)取り組みが印刷機メーカーと製本機器メーカーの協力により,随所に見ることができた。
 製本機大手のコルブスでは,コダックのIJ装置を搭載したTimsons社製輪転IJ機を実演。オフ輪と同じ本体なので,用紙が折られた束の状態で排出され,インラインでそのままコルブスの丁合い,無線綴じ,三方断裁の各機器を過ぎて厚さや大きさが異なる本になって出てくる。ミューラーマルティニでも,たとえばヒューレット・パッカードのIJブースで出力実演した巻取り紙が運ばれてきて,コルブスと同様にそのまま巻取り紙の断裁・折り・綴じ・三方断裁されて本が人の手を介さず排出される。ホリゾンの製本機器は,小森コーポレーション,東京機械製作所,大日本スクリーン,ゼロックス,ヒューレット・パッカード,キヤノン・オセの各ブースでBODが実演された。

液体トナーdrupa
 液体トナーと言うと,ヒューレット・パッカードのHP Indigoシリーズ(旧イスラエルIndigo社)が有名で,今回同社はデジタル印刷機の新製品を6機種発表した。また,ミヤコシも用紙搬送などをリョービと共同開発したデジタル枚葉印刷機を実演した。そのほか,粉体トナー機では定評あるXeikonも発表しており,今回も若干紹介があった。ほかにもあるプリンタメーカーはすでに発表予定の段階にある。液体トナーも今後の先行きに注目が集まる。

ビジネスモデルdrupa
 技術でなくマーケティング志向で展示するメーカー,とくにプリンタ系で仕事の分野ごとにフローを紹介するメーカーが多かった。キヤノン・オセは,(フォトブックをはじめとした)写真,サイン・ディスプレイ,商業印刷,企業内印刷の分野ごとに,ヒューレット・パッカードは(パッケージ系含む)商業印刷,サイン・ディスプレイ,(トランザクション系含む)出版印刷の分野ごとに,各社得意のデータ管理システムや出力機を紹介した。ハイデルベルグもリコーもそれぞれ同様なパターンだった。

生産性向上drupa
 もはや,従来のオフセット印刷に関係するものは新製品は少なく,マイナーチェンジによる生産性・効率化向上を目指すものが多かった。富士フイルムや大日本スクリーン,コダックは,自社のワークフロー(RIP)とCTPとIJ印刷機を擁し,自社のワークフローから大部数のものはCTPに,小部数のものはデジタル印刷機で出力する仕組みを紹介した。印刷機械メーカーのハイデルベルグも同様で,リコーと提携した理由もその一つだろう。これらの出展社だけではないが,Web to Printからの提案も多くあった。
 製本までを考えた時に,製本機の速度は印刷機より遅い点がオンデマンドでは欠点になるときがあるが,ハイデルベルグの折り機の新製品は,折った用紙の排出口を上下2ヵ所にし,生産性を2倍にした。

ランダdrupa
 今回最も注目を浴びたのが,Indigo社の創業者ベニー・ランダ氏率いるランダ・コーポレーションの「ナノグラフィ」技術である。ナノレベルのインク「ナノインク」とIJ,そしてオフセットにより,平版オフセット印刷とIJ印刷を応用した従来にない技術である。IJで画像を中間転写ベルトに吐出しそれを用紙に転写する(オフセット)。用紙上のインクの膜厚は500ナノ・メートル(nm)程度(通常のオフセット印刷は1000nm=1ミクロン)のため,このように命名したのだろう。枚葉,輪転各3機種を発表し,最高速度の機種は片面13,000枚/時,両面6500枚,200m/分。今回のdrupaを「ランダdrupa」と呼ぶ人も少なくない。

世界4大機材展は毎年
 世界の印刷産業では,4大機材展としてdrupa,PRINT,IPEX,IGASの展示会が順次毎年開催される。来年の2013年は9月8日〜12日に米国シカゴでPRINT,2014年は3月26日〜4月2日に英国ロンドンでIPEX,2015年10月に東京でIGAS(2013年10月2日〜5日に東京で国内展JAGS開催)が開催される。印刷機械はもとより,印刷物製造も国際化する時代になった。新技術,新製品の動向を知るだけでなく,市場ニーズがどのようになっていくのかを知る上でも,国際展示会に参加する意義は大きくなっている。

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月刊『印刷雑誌』6月号(1470円)が5月21日に発行されます。drupa2012のレポートは7月号(6月20日発行)と,より掘り下げて8月号(7月20日発行)に掲載予定です。お楽しみに。なお,週刊『印刷雑誌』臨時号 3巻12号(3月22日発行),週刊『印刷雑誌』臨時号 3巻18号(4月26日発行)でもdrupa出展情報を提供しております。合わせてご利用ください。

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週刊『印刷雑誌』臨時号 3巻20号
2012年5月10日発行
編集長:武川久野
発行人:中村幹
発行所:株式会社印刷学会出版部

 

 

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